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マギの礼拝「女王メアリーの詩篇集」より

宮廷風様式の「女王メアリーの詩篇集」。様式比較によって20冊ほどの写本がまとめられ、1310年代から20年代半ば頃にロンドンで制作されたと考えられている。
画面上部では3人のマギが聖母に抱かれた幼児イエスに挨拶をしている。装飾文字Dには神に祈るダヴィデ、ページ下部にはギョーム・ル・クレール作「動物誌」に従って、口で受胎し耳で子を産むとされたイタチの習性が描かれている。
「女王メアリーの詩篇集」の巻頭には旧約聖書の物語が、天使墜落・天地創造からソロモンの死まで、淡彩を施したデッサンで原則各ページに2図ずつ計223図描かれている。次いで旧約と新約をつなぐ主題の着色ミニアチュールが4葉、本文下部には動物誌、聖母の奇跡集、聖人伝からの主題によるデッサン、テキストの分節ごとに新約聖書や聖人伝からの主題による大型ミニアチュール(右図)が挿入されている。
注文主は不明。後年、海外に持ち出されそうになったとき、港で押収され、女王メアリー1世(在位1553〜58)に献じられ、以後王室コレクションに加えられた。
イギリスでは13世紀前半から宮廷風様式とは対照的な、空想的・自然主義的な「滑稽モティーフ」が写本ページの余白に見られる。しだいにレパートリーを増やして、農村や都市の日常生活や聖書・世俗の物語からの主題も現れた。14世紀前半には宮廷風様式と対立するイースト・アングリア様式と呼ばれるようになった。時代様式として宮廷風様式を含む14世紀前半のイギリス写本の装飾一般の特徴を指す場合もある。
世界美術大全集10 ゴシック2 1300・10年代

マギの礼拝
「女王メアリーの詩篇集」より
1310〜20年頃 写本装飾 27.7×17.5cm
イギリス ロンドン 大英図書館